メディカルコラム

【隈病院 専門医監修】原発性副甲状腺機能亢進症とは?高カルシウム血症・骨粗鬆症・尿路結石との関係を解説

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副甲状腺とは

副甲状腺(別名、上皮小体)は甲状腺の裏側に通常左右上下合わせて4つあり、とても小さな臓器です(図1)。米粒ほどの大きさ(平均30〜50mg)ですが、副甲状腺ホルモン(PTH)を作り、血液中のカルシウム濃度を一定に保つ大切な役割を担っています。副甲状腺の数や位置には個人差があり、3つしかない場合や5つ以上ある場合があり、また、甲状腺から離れた胸の中(縦隔)や甲状腺の中に埋もれていることもあります。

図1. 副甲状腺

副甲状腺ホルモンとは

副甲状腺ホルモンには、主に次の3つの働きがあり、血液中のカルシウム濃度を正常に保っています。

  • 骨:骨に蓄えられたカルシウムを血液中に溶かします。
  • 腎臓:尿へ排泄されるカルシウムを再吸収(回収)します。
  • 腎臓:腎臓でビタミンDを活性化させ、腸からのカルシウム吸収を高めます。

原発性副甲状腺機能亢進症とは

原発性副甲状腺機能亢進症とは、副甲状腺自体に腫瘍ができ、副甲状腺ホルモンが慢性的に過剰に分泌される病気です。その結果、血液中のカルシウムが異常に高くなります。

一方、慢性腎不全やビタミンDの作用低下などによって血液中のカルシウムが低くなり、それを補おうとして副甲状腺ホルモンが増える状態は、二次性副甲状腺機能亢進症と呼ばれます。

今回は、原発性副甲状腺機能亢進症について解説します。

病気の特徴

副甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることで、骨からカルシウムが血液中に溶けだし、血液中のカルシウム値が高くなります。さらに、その一部は尿中に多く排泄されます。

そのため、次のような症状や異常が起こることがあります。

  • 骨への影響:骨がもろくなり、腰痛、関節痛、骨粗鬆症や骨折の原因になることがあります。
  • 腎臓への影響:尿路結石(腎結石)ができたり、腎機能が悪化することがあります。
  • 高カルシウム血症による影響:倦怠感、頭がぼんやりする感じ、気分の落ち込み、のどの渇き、吐き気、嘔吐、胃十二指腸潰瘍、膵炎、筋力低下、血圧上昇などの様々な症状が起こることがあります。カルシウム値が著しく高くなると、意識障害を起こすこともあり、注意が必要です(表1)。
表1. 原発生副甲状腺機能亢進症の症状

最近は、骨の異常や尿路結石をきっかけに見つかるよりも、健診などの血液検査でカルシウム値の上昇を指摘され、無症状のうちに偶然発見される機会が増えています。しかし、一見すると無症状に見えても、手術後に「体が軽くなった」「元気になった」と症状の改善を実感されるケースもしばしばあります。

この病気は一般にはあまり知られておらず、経過観察となることもありますが、根本的に治す方法は手術のみです。手術は比較的短時間で、体への負担も少ないため、当院では積極的に手術を行っています。

診断のための検査

当院では、確実な診断と安全な手術のために、以下の検査を行います。

1. 血液・尿検査

血液中のカルシウムや副甲状腺ホルモンが高値になります。ただし、カルシウム値はほぼ正常上限のこともあるので、わずかな異常も見逃さないことが大切です。

また、血液中のカルシウム値と副甲状腺ホルモン値がやや高くなる病気として、家族性低カルシウム尿性高カルシウム血症 (FHH)があります。血液中と尿中のカルシウムとクレアチニンの値を測定して鑑別します。

2. 家族歴

まれに遺伝的な要因が関係することがあります。家族歴で遺伝性を疑う場合には、遺伝学的検査を行うことがあります。

3. 骨密度測定

多くの場合は骨密度が低下しています。体の部位によって骨の構造は異なり、骨への負担も異なるため、当院では腰椎、大腿骨、前腕骨の3か所で骨密度を測定して評価します。

4. 腫大した副甲状腺の位置を調べる検査

どの副甲状腺が腫れているかを調べるために、まず頸部超音波検査を行い、次に副甲状腺シンチグラフィや頸部造影CTを行います。

a) 頸部超音波検査(図2)

超音波検査は、甲状腺や乳腺と同様に、副甲状腺の評価にとても役立つ検査です。腫大した副甲状腺は、甲状腺の裏側や下側に接して、周囲より暗く見える低エコー領域として描出されることが多く、血流の特徴なども参考にしながら、甲状腺腫瘍やリンパ節との鑑別を行います。ただし、甲状腺に大きな腫瘍がある場合や甲状腺自体が大きい場合には、副甲状腺が見えにくいことがあります。また、胸の中(縦隔)などにある場合には、確認できないことがあります。

図2. 頸部超音波検査

b) 副甲状腺シンチグラフィ(MIBIシンチグラフィ)(図3)

約90%の患者さんでは超音波検査で腫大した副甲状腺を検出できますが、診断を確実にするためや、2つ以上の副甲状腺が腫大している可能性や胸の中(縦隔)など甲状腺から離れたまれな場所にある腫大腺の有無を調べるために、副甲状腺シンチグラフィ(MIBIシンチグラフィ)を行います。この検査では、放射性同位元素(ラジオアイソトープ)で標識された薬剤を注射し、体の中での薬剤の分布を画像化します。妊娠中や授乳中を除けば、通常は体への大きな影響を心配する必要はありません。

図3. MIBIシンチグラフィ

c) 造影CT検査

頸部超音波検査とMIBIシンチグラフィで腫大した副甲状腺の位置がはっきりしない場合や、2腺以上の腫大を疑う場合などは、造影CTを行います。小さな副甲状腺腫瘍の描出率も高く、リンパ節などとの鑑別にも有用です。

治療

副甲状腺機能亢進症に伴う高カルシウム血症に対して、カルシウム値を下げる薬(カルシウム受容体作動薬:シナカルセト塩酸塩やエボカルセト)を使うことがあります。ただし、これらの薬を服用しても、原発性副甲状腺機能亢進症そのものが治るわけではありません。この病気を根本的に治す治療法は手術だけです。

表1に示したような症状がこの病気と明らかに関連している場合は、手術の適応になります。また、高カルシウム血症が軽度であっても長期間続くと、骨や腎臓などに障害を起こす可能性があります。自覚症状がない場合は、日本内分泌外科学会のガイドラインに示されているように、血液中のカルシウム値、骨密度、腎機能、腎結石の有無、年齢などを参考に手術適応を検討します。倦怠感や気分の落ち込みなどの精神・神経症状は、他の原因でも起こるため、症状が軽い場合の手術適応については議論があります。カルシウム値の上昇が軽度でも、手術によって様々な症状が改善することがありますので、当院では、腫大した副甲状腺の位置を確認できた場合には、積極的に手術治療をお薦めしています。

原発性副甲状腺機能亢進症の原因となる副甲状腺の腫瘍には、腺腫、過形成(多腺性副甲状腺疾患)、癌があり、腫瘍の種類によって治療法が異なります。以下にそれぞれを説明します。

1. 腺腫

病態

原発性副甲状腺機能亢進症の症例の80〜90%は、4つの副甲状腺のうち、1つの副甲状腺だけが腫れる単発性腺腫です。

手術

腫大した副甲状腺を摘出します。手術時間は30から60分程度で、体への負担も比較的軽い手術です。

2. 過形成(多腺性副甲状腺疾患)

病態

4つある副甲状腺のうち、2つ以上が腫大する多腺性の病気は、全体の約10〜20%です。家族性に起こることがあり、脳下垂体、膵臓、甲状腺などほかの臓器の異常を伴うこともあります。

従来は「過形成」と呼ばれてきましたが、最近は一部の症例で複数の副甲状腺に腫瘍性の増殖が見られることが分かってきたため、「過形成」よりも「多腺性副甲状腺疾患」という呼び方も使われています。

手術

すべての副甲状腺が腫大している場合は、副甲状腺をすべて摘出し、その一部を前腕などの筋肉に移植します。一方、副甲状腺の腫れが3腺のみあるいは2腺のみの場合には、これらだけを摘出することもあります。ただし、どの方法でも再発の可能性があるため、長期的な経過観察が必要です。

3. 癌(疑い)

病態

非常にまれで全体の1〜2%未満です。通常は1つの副甲状腺が腫大し、硬く不整な腫瘤として触れることが多く、中等度(13〜14mg/dL)以上の高カルシウム血症を伴う場合には、副甲状腺癌を疑います。腫瘍が周囲組織へひろがったり(浸潤)、リンパ節やほかの臓器へ転移することがあります。

手術

副甲状腺癌が疑われる場合には、腫瘍だけでなく、甲状腺の一部など周囲組織を含めて切除します。

手術後の診療

単発性腺腫では、再発は非常にまれですが、血中カルシウム値が上昇して、実際には多腺性病変だったことが分かる場合があります。多腺性副甲状腺疾患では、残った副甲状腺や前腕などに移植した副甲状腺が大きくなることがあるため、長期間の経過観察が必要です。

定期的に血液検査でカルシウム値などを確認します。あわせて、骨密度検査を行い、骨の回復状態も評価します。骨密度の低下が続く場合には、治療を検討します。

さいごに

原発性副甲状腺機能亢進症は、あまり聞き慣れない病気かもしれません。しかし、血液中のカルシウム値が高くなることで、骨や腎臓、さらに全身の体調に様々な影響を及ぼすことがあります。一見すると無症状に見えても、手術によって症状が改善して快適な生活を送る可能性が期待できます。また、長期間放置した場合には、骨や腎臓などの障害をきたす可能性があります。根本的な治療は手術のみで、当院の専門医が実施すれば手術は短時間で侵襲も少ないので、手術を薦められた場合は、是非受けられることをお薦めします。

健診などでカルシウム値の異常を指摘された方や、この病気が疑われる方は、お早めにご相談ください。

院長補佐 宮章博

PROFILE

1984年鹿児島大学医学部を卒業後、大阪大学の第二外科に入局。関連病院で外科医としての研鑽を積んだ後、大学で従事した遺伝子研究をきっかけとして甲状腺・内分泌疾患の道へ。2002年に隈病院に入職した後は、診療や手術のみならず、研究や教育にも尽力してきた。2015年に副院長に就任。安全な手術を行うためのトリプルチェック体制など、病院全体の診療体制の構築に力を注いできた。2024年に院長補佐に就任。日本内分泌外科学会では理事を務め、2017年には、第29回日本内分泌外科学会総会を会長として開催した。副甲状腺機能亢進症診療ガイドラインの作成委員。

本記事は、隈病院の医師が監修しています。詳細はこちら

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