さくっと解説!3分動画

症状

甲状腺機能亢進症は、症状の現れ方に個人差がありますが、特に 「甲状腺腫(首の腫れ)」 や 「頻脈(脈が速くなる)」などの症状がみられます。また、よく食べていても体重が減る、暑がりになる、疲れやすくなるなど、体の代謝が必要以上に活発になることで起こる症状もあります。

主な変化

  • 暑がりになる

  • 多汗になる(発汗過多)

  • 体温が上がる

  • 食欲が亢進する(食べる量が増える)

  • 筋力の低下

  • 体重が減る(たくさん食べているのに体重が増えない)

  • 脈が速くなる

  • 動悸がする

  • 手・指先が震える

  • 落ち着きがなくなる

  • イライラしやすくなる

  • 疲れやすくなる

  • 不眠になる

  • 月経不順になる

  • 便秘や下痢になりやすい

  • 目(眼球)が出てくる

  • 抜け毛が増える

  • 甲状腺の腫れ

  • 興奮、不安、イライラしやすくなる

  • 血圧が高くなる

首の腫れ

甲状腺機能亢進症では、首の腫れ(甲状腺腫)が見られることがあります。特に、甲状腺機能亢進症の代表的な原因である「バセドウ病」では、甲状腺全体が腫れて大きくなる 「びまん性甲状腺腫」 が特徴的です。腫れの程度には個人差があり、あまり目立たないこともありますが、外からは首が太くなったようにみえます。

頻脈

甲状腺ホルモンが過剰になると心臓の働きが刺激され、安静にしていても「頻脈(脈が速くなる)」や「動悸(ドキドキする)」が起こることがあります。また、少し動くだけでも「息切れ(息がハーハーする)」がしたり、脈が飛んだように感じる「不整脈」が起こる場合もあります。これらの心臓・循環器の症状は、甲状腺機能亢進症が原因で起こる場合もありますので、症状が悪化する前にかかりつけ医などを受診し、早期に診断をつけて適切な治療を開始することが大切です。

暑がり、体重減少など

体の代謝が必要以上に活発になることで、暑がりになったり、汗をかきやすくなったりします。また、たくさん食べているのに体重が減ってしまう、手がふるえる、疲れやすくなるといった症状がみられることがあります。さらに、眠りが浅くなる、女性では月経不順になるなど、日常生活の中で気づきやすい変化が起こるのも特徴です。

原因

甲状腺機能亢進症は、甲状腺ホルモンが必要以上に分泌されることで起こります。 その原因はいくつかありますが、代表的な病気は次の3つです。

バセドウ病

バセドウ病は、甲状腺機能亢進症の原因として最も多い病気で、免疫の異常によって起こります。本来、体を守る役割をもつ免疫が誤って働き、甲状腺を刺激する「自己抗体」をつくってしまいます。この自己抗体が、甲状腺を過剰に刺激することで、甲状腺ホルモンが必要以上に作られ、血液中に多く放出される状態になります。バセドウ病は女性に多くみられ、首の腫れのほか、目が飛び出して見えるような眼の症状(甲状腺眼症)が現れることもあります。

亜急性甲状腺炎・無痛性甲状腺炎

亜急性甲状腺炎・無痛性甲状腺炎は、何らかの原因によって甲状腺の細胞が破壊され、甲状腺内にたまっていた甲状腺ホルモンが血液中に漏れ出てしまう病気です。これにより、甲状腺ホルモンが一時的に増加し、甲状腺機能亢進症の症状があらわれます。これらの病気は、一時的なもので、大抵の場合、自然に治癒するため治療は必要ありません。症状が強い場合には治療が必要になりますが、バセドウ病とは原因が異なるため注意が必要です。炎症が起こると、甲状腺に蓄えられていた甲状腺ホルモンが、血液中に放出され、その場合最初は甲状腺機能亢進症のような症状がみられます。その後、蓄えていたホルモンがなくなると、甲状腺の働きが一時的に弱くなり、甲状腺機能低下症の状態になることがあります。

プランマー病(甲状腺腫瘍)

甲状腺腫瘍は、甲状腺に「しこり(結節)」ができることをいいます。腫瘍には「良性」と「悪性(がん)」がありますが、甲状腺腫瘍の多くは良性で、命に関わることは、ほとんどありません。しかし、腫瘍の種類によっては、まれに甲状腺ホルモンを過剰に作りだし、甲状腺機能亢進症の原因となる場合があります。その代表が 「プランマー病(機能性甲状腺結節)」です。この病気では、しこりの部分が脳からの指令を受けなくてもホルモンを作り続けてしまうため、頻脈、汗をかきやすい、体重減少など、甲状腺機能亢進症と同じ症状がみられます。

検査

甲状腺機能亢進症の診断や症状の程度を調べるためにはまず、全身診察と甲状腺の視診・触診を行います。次に、血液検査によって甲状腺ホルモンの量(甲状腺機能検査)と自己抗体の有無(甲状腺自己抗体検査)を調べます。また、「超音波検査」や、甲状腺ヨウ素摂取率・シンチグラフィ検査などを行います。不整脈や心不全などのリスクが高まる可能性もあるため、心臓への影響をみる心電図や胸部X線検査を追加する場合もあります。

甲状腺機能検査

甲状腺機能検査は、血液中の甲状腺ホルモンであるFT4・FT3、そして甲状腺刺激ホルモン(TSH)の値を測定します。TSHは脳のすぐ下にある「下垂体」から分泌され、甲状腺ホルモンの量が多すぎたり、少なすぎたりしないように調整する役割をしています。そのため、甲状腺ホルモン(FT4・FT3)と甲状腺刺激ホルモン(TSH)は、シーソーのように相互に関連しあっています。つまり、甲状腺機能亢進症では、甲状腺ホルモンが必要以上に多くなるため、体は「これ以上ホルモンを作らなくていい」と判断します。その結果、下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモン(TSH)は低値になります。

甲状腺自己抗体検査

甲状腺自己抗体検査は、甲状腺機能亢進症の原因を調べるための血液検査で免疫の異常が関係しているかを確認します。主に、甲状腺を過剰に刺激するTSH受容体抗体(TRAb) や 甲状腺刺激抗体(TSAb) を測定します。これらが陽性だった場合、甲状腺ホルモンが過剰に作られる甲状腺機能亢進症の原因のひとつである可能性が高く、診断の重要な手がかりになります。このほか、抗Tg抗体(TgAb)や 抗TPO抗体(TPOAb) といった、甲状腺に自己免疫が関係しているかを判断するための検査もあります。

超音波検査

甲状腺機能亢進症での超音波検査は、甲状腺の形や大きさ、内部の様子、血流の状態などを調べるために行います。甲状腺全体が同じように腫れる「びまん性甲状腺腫」があるか、血流が増えていないかを確認することで、バセドウ病や甲状腺炎など、原因を見分ける手がかりになります。また、甲状腺腫瘍の合併の有無を確認することができ、プランマー病(機能性甲状腺結節)の可能性を調べることにも役立ちます。超音波検査は、痛みや放射線の心配がない安全な検査で、甲状腺機能亢進症の原因を調べるための重要な検査です。

治療

甲状腺機能亢進症の原因として最も多くみられるのは、バセドウ病です。バセドウ病の治療には、「薬物治療」「アイソトープ治療」「手術治療」の3種類があります。症状や身体の状態、生活環境やその他の状況を考慮して、医師と相談しながら決定します。甲状腺機能亢進症の治療では、まず血液中の甲状腺ホルモンを低下させ、正常に戻すことが重要です。甲状腺ホルモンを適切な量まで戻すことで、動悸・息切れや多汗などの症状は軽減されます。そのため薬物治療から始めることが一般的です。その後、病状などを考慮してアイソトープ治療や手術が選択されることがあります。

治療法長所短所
薬物療法
  • 薬を飲むだけでよい
  • 甲状腺機能低下症になっても戻る
  • 副作用があり得る
  • 治療が長期にわたる
  • 再発が多い
    アイソトープ治療
    • カプセルを1回飲むだけで良い
    • 薬物治療法に比べ短期間の治療で済む
    • 副作用、合併症がほとんどない
    • 甲状腺の腫れが小さくなる
    • 再発が少ない
    • 治療を受ける施設が限られている
    • 甲状腺機能低下症になりやすい
    手術
    • 確実に治療効果が得られる
    • 甲状腺の腫れが小さくなる
    • 再発が少ない
    • 手術の跡が残る
    • 専門の施設が限られている
    • 甲状腺機能低下症になりやすい

    亜急性甲状腺炎・無痛性甲状腺炎の場合は、自然に治癒することがほとんどであるため、基本的には治療は必要ありません。ただし、症状が強い場合には、痛みや動機などを軽減させることを目的として、痛み止めや副腎皮質ホルモン薬、β遮断薬などのお薬を内服することがあります。

    また、炎症によって甲状腺組織が破壊されている状態が長引くと、蓄えていたホルモンが流れ出てしまい、甲状腺機能低下症になることがあります。その場合は、甲状腺ホルモン薬を内服して不足している甲状腺ホルモンを補います。

    薬物治療

    甲状腺機能亢進症の原因がバセドウ病の場合、まずは服薬によって甲状腺ホルモンの量を調整していく薬物療法が一般的です。
    お薬には、ホルモンの合成や分泌を抑える「抗甲状腺薬」と「ヨウ素製剤」の2種類があります。

    ほとんどの場合、抗甲状腺薬を用いますが、副作用の状況や、妊娠・授乳中などの身体状況によってはヨウ素製剤が選択される場合もあります。

    内服を始めて早い方では1か月ほど、遅い方でも3~4か月ほどで、血液中の甲状腺ホルモンの値が低下して、動悸・息切れ・手の震えなどの症状の改善が期待できます。

    数値が安定すれば薬の量を少しずつ減らし、医師が状態を確認しながら服薬量と処方期間を調整します。
    最小量の服薬で甲状腺機能が正常であれば内服を一旦、中止することが考慮されます。服薬がなくなっても甲状腺機能が正常を維持している状態を「寛解(かんかい)」と呼びます。ただし、「完治」というわけではなく、その後も再発することがありますので定期的な経過観察が必要です。

    注意

    症状が軽減したからといって、自己判断で服薬を中断するのは非常に危険です。甲状腺クリーゼと呼ばれる生命の危機をともなう重篤な状態に陥る場合があります。定期的に受診し、指示された用法・用量を守って服用を続けることが重要です。

    一方、甲状腺炎が原因の場合には、抗甲状腺薬を服用してはいけません。甲状腺炎は、炎症による甲状腺組織の破壊で甲状腺ホルモンが漏れ出していることが原因であることから、甲状腺の機能を抑える抗甲状腺薬を用いれば、逆に副作用のリスクが大きいためです。

    アイソトープ治療

    アイソトープ治療(¹³¹I内用療法)は、甲状腺がヨウ素を取り込む性質を利用して、甲状腺組織内部から放射線照射を行う治療法です。ごく弱い放射線を含んだ医療用のカプセルを1回服用するだけで治療ができるため、外来で受けることができます。内服すると甲状腺に放射性ヨウ素が集まり、甲状腺の組織を破壊するため、甲状腺が小さくなって、甲状腺ホルモンを作る力を弱めることができます。バセドウ病が原因の場合は、薬物治療で十分に改善しない場合や副作用が強い場合、治療の継続が難しい場合などにアイソトープ治療が選択されることがあります。

    ただし、妊娠中はこの治療を受けることはできません。また、治療後は放射性ヨウ素の影響を避けるため、女性は6か月、男性は4〜6か月の避妊が必要です。

    手術

    手術によって甲状腺を切除すると、甲状腺ホルモンの過剰な産生を抑えることができます。甲状腺機能亢進症の原因が、バセドウ病である場合に加え、プランマー病の場合もホルモンを過剰に産生する原因となっている腫瘍の摘出のために選択される治療法です。
    バセドウ病の治療として手術を選択した場合、切除範囲は、以前は甲状腺の大部分を切除する「亜全摘」が一般的でした。しかし、甲状腺をどのくらい残すべきか、という推定は非常に難しく、少しでも甲状腺の組織が残っていれば、再び病気が進行する「再燃・再発」のリスクが否定できないことから、近年では甲状腺を全て切除する「全摘」が主流となっています。

    まとめ

    • 甲状腺機能亢進症は、甲状腺ホルモンが必要以上に作られることで起こる 状態です。
    • 甲状腺機能亢進症では、「甲状腺の腫れ」「頻脈」のほか、動悸や息切れ、多汗、体重減少などの症状がみられます。
    • 甲状腺機能亢進症の原因が「バセドウ病」場合、治療は通常、「抗甲状腺薬」の内服から開始されます。 症状は1~4か月で改善することが多いです。
    • 病状や経過によって、アイソトープ治療や手術治療が必要になることがあります。
    • 症状が軽減したからといって自己判断で治療を中断するのは非常に危険です。定期的な通院を継続して、ストレスを避けた規則正しい生活を心がけましょう。

    理解が深まる用語解説

    甲状腺クリーゼ

    甲状腺クリーゼは、甲状腺ホルモン作用が急激に増加することで、心臓や脳などに大きな負担がかかり、命に関わるほど非常に危険な状態です。治療が十分に行われていないとき、感染症や手術、出産などをきっかけに発症することがあります。高熱、激しい発汗、脈が非常に速くなる、意識がもうろうとするなどの症状がみられる場合は、すぐに医療機関での緊急治療が必要です。

    抗甲状腺薬

    抗甲状腺薬は、甲状腺ホルモンが多く作られることを抑える飲み薬です。主にバセドウ病が原因の甲状腺機能亢進症の治療に使用され、動悸や手のふるえ、体重減少といった症状を改善します。きちんと服用を続けることで、多くの場合は1~2か月ほどで症状は軽くなり、血液検査の値も改善していきます。症状が安定すると、薬の量を徐々に減らし、最終的には服用を中止できることもあります。ただし、まれに副作用が出ることもあるため、医師の指示を守って治療を続けることが大切です。

    結節性甲状腺腫

    結節性甲状腺腫とは、甲状腺に「しこり(結節)」ができる状態をいいます。多くは良性で、経過観察のみで問題ない場合もありますが、まれに悪性(甲状腺がん)のこともあります。詳しい検査が必要になります。診断には、超音波検査や細胞を採取して調べる検査を行い、良性か悪性かを判断し、状態に応じて、手術などの治療が選択されることがあります。

    本記事は、隈病院の医師が監修しています。詳細はこちら

    友だちや家族に教える